クルマがスマホ化する時代 ポルシェ ジャパン社長に聞く



「EV時代のポルシェ」に見るMacとの共通性

2018年02月13日 06時30分更新

文● 西田宗千佳 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

 「ポルシェにとっては、過去20年より、この1、2年の変化の方がずっと大きい」

 ポルシェ ジャパンの七五三木(しめぎ)敏幸社長はそう断言する。

ポルシェ ジャパン株式会社の五三木敏幸(しめぎ・としゆき)代表取締役社長

 自動車業界は、EV(電気自動車)と自動運転という2つのイノベーションによる変化を迎えている。時代の変化と無縁な企業はなく、ポルシェもまた例外ではない。ポルシェといえば自動車好きのための車であり、EVや自動運転の波は一般車より緩やかであるようにも思えるが、七五三木社長の危機感は決して小さなものではない。

 EV・自動運転時代に向けて、ポルシェはどのような企業になろうとしているのだろうか?

未来永劫「スポーツドライビング」を提供するために

 「お客様はなぜポルシェを選ぶか、おわかりになりますか?」

 七五三木社長はそうこちらに問いかけた。

 「走りが好きだ、という方もいらっしゃいます。ハードウェアの精密さ、精緻な組み上げを評価するところもあるかも知れません。実際、お客様の平均年齢層は高めです。『クラシック』と呼ばれる、1964年からの涙目型のヘッドライトに愛着を持っていらっしゃる、愛好家の方は多数いらっしゃいます。ビジネス的にいえば、そうしたニーズから逸脱しない方が得です。『水平対向エンジン以外がポルシェじゃない』と言った方が得なのかもしれない」

 とはいいつつ、ポルシェはそうは思っていない。だからこそ、新車が発表されるたびに新しい要素が生まれる。ポルシェによるEV最新車種「パナメーラ 4 E ハイブリッド」は、その名の通りプラグインハイブリッドとなり、モーターだけでも駆動する。ポルシェサウンドを伴わないポルシェでもあり、「ポルシェが電気自動車なんて……」という声もある、という点を、七五三木社長は否定しない。だが、である。


パナメーラ 4 E ハイブリッド スポーツツーリスモ(Panamera 4 E-Hybrid Sport Turismo)

 「プラグインハイブリッドだと、初速は考えられないくらい速い車になります。加速が続くと電気はどんどんトルクが落ちてくるので、その先はエンジンで。ガソリン車で一番速い911とパナメーラを比べると、100km/hに到達するまでの距離は、パナメーラの方がちょっと速いんですよ。ポルシェとしてヒエラルキーの一番上のものがプラグインハイブリッド。

 他社との差別化がここかな、と思っています。もちろんガソリンエンジンの車もお好きですよね? ポルシェにもいろいろな車があります。その中から、お客様はお好きなポルシェを選んでいただければいいんです。でも……」

 七五三木社長は言葉を切ってこう続ける。

 「ある時ある国、あるマーケットで、お好きな車が乗れない時期がやって来ます。ガソリン車の、昔と同じポルシェに乗れない時期が来るかもしれない。その時にも我々には、規制の中で『ポルシェというスポーツカー』をオファーする義務があります。申し訳ありません、乗れません、では済まされないのです。これが『サステナブルである』ということです。

 我々がやらなければいけないのは、いかなる状況でもスポーツカードライブを、パワートレインの種類に関係なく提供し続けることなんです。馬車から自動車の過渡期には、どちらがいいのか、という比較論がありました。そこで馬を選ぶ方はいたわけですが、今はもう馬に乗っている方はいらっしゃいません。でも、乗馬クラブにいけば馬には乗れるわけです。そうして、馬の良さが生き残っている。

 ガソリンエンジン車が公道を走れなくなる時が来るかもしれません。でも、ポール・リカールやシルバーストーンといったサーキットではずっと走れます。趣味としてお持ちいただくぶんには、ガソリン車とEVは共存できるんです。そのためには、パーツなどもしっかり長く供給する必要があるでしょう。そこで、弊社は長い歴史があります。世界一どころか宇宙一だと思っています」

 すなわち、ポルシェがポルシェであるアイデンティティーは「スポーツドライビング」にあり、ということだ。


 「ポルシェは、トップからすべて、車としてはすべてがスポーツカーです。具体的にはどういうことかというと、前後50:50の重量配分で、ワクワクする走りをご提供できる、ということです」

 すなわち、ガソリンエンジンがハイブリッドになり、さらに完全なEVの時代が来たとしても、ポルシェが作るのはスポーツカーであることに変わりはない。時代や市場の要請に合わせてカイエンのようなSUVや4シーターのパナメーラもあるが、どの車種でも提供する根本的な価値は変わらないし、これからも変えるつもりはない。

 ハイブリッド車の投入もEVも、最終的には「スポーツドライビングの価値を顧客に提供する」ことが目的であり、そのために作られたものになる。どんな時代になってもスポーツドライビングの価値を提供することが、同社の軸なのだ。

 では、そのさらに先の未来を七五三木社長はどう見ているのか。







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