IoTはなぜクラウドと親和性が高いのか–クラウドベンダー座談会(3)



 2016年は企業のクラウド利用が一気に広まった一年であり、基幹系を含むオンプレミスのシステムをクラウドに移行する動きも強まっている。クラウドベンダー側でも連携するケースが増えており、従来に比べて環境も整い、基幹系を含むシステムのクラウド移行の土台ができてきた。

 こうした状況の変化により、クラウドは新たなフェーズを迎えようとしているのか。今回、日本マイクロソフトの吉田氏、NTT Comの林氏、日本IBMの安田氏、日本オラクルの竹爪氏を招き、座談会を開催した。モデレーターはZDNet Japan編集長の怒賀新也が務めた。今回は初回2回目に続く3回目。今回は、IoTによる新たな事業展開を考える企業のニーズとクラウド活用の間の親和性について議論している。

登壇者(順不同)

  • 日本マイクロソフト株式会社
    クラウド&ソリューションビジネス統括本部
    Azure&クラウドインフラストラクチャ技術本部
    クラウドプラットフォーム技術部
    テクノロジーソリューションプロフェッショナル
    吉田雄哉氏
  • NTTコミュニケーションズ株式会社
    クラウドサービス部
    クラウド・エバンジェリスト
    林雅之氏
  • 日本アイ・ビー・エム株式会社
    クラウド事業統括
    クラウド・ソリューション
    第二テクニカル・サービス
    シニア・アーキテクト
    部長 安田智有氏
  • 日本オラクル株式会社
    執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括
    Cloud Platform事業推進室長
    竹爪慎治氏

竹爪氏 IoTでは、撤退リスクも含めてクラウドとの親和性が高いのではないですか。

日本オラクル株式会社の竹爪慎治氏
日本オラクル株式会社の竹爪慎治氏

林氏 はい。IoTとクラウドの親和性は高いと思います。製造業などのお客様が、IoTビジネスのPoC(概念実証)などさまざまな検証をしているところです。基幹系も含めて、中長期的に3~4年かけてのクラウドへの移行や、システム更改時にまとめて移すという長期的なパターンと、IoTのように撤退を想定するもの、大きく分けてこの2つがあると思っています。

竹爪氏 IoTも基幹につながるなど、基幹の一部の機能を持つという機能も増えてくるので、うまくいってくると今度は基幹とのつなぎというところでも、「クラウドを使っていこう」となります。IoTはクラウドとすごく親和性が高いと感じますね。

吉田氏 マイクロソフトでは「NOW ON Azure」というサイトを公開しているのですが、ここで成功事例のお客様の名前を前面に出しています。私自身も驚いたのですが、これが起点になっているケースがよくあります。アジリティやコストなど、成功の要因はさまざまですが、一番のポイントはビジネスパートナーとして成立していることです。

 その部分をマイクロソフトが支えたことで、さらにビジネスが伸びたという実績をつくることが一番効果が高いと思います。このサイトでは、メリットを感じてもらったお客様の企業名を掲載して、赤裸々に書いてもらっています。しかも、お客様によってメリットが異なるので、クラウドの可能性を実感できるのです。

 IoTがクラウドと親和性が高い理由の1つは、IoTにおいて用意しなくてはいけないものが非常に多くあることです。例えば、膨大な数の通信を受け取るハブになる要素があります。インターネットを経由して飛んでくる通信をオンプレミスに置くわけにはいきません。それならインターネット上に置いておいた方がいいわけです。

 また、受け取ったデータをすぐ処理したり、受け取り続けるデータをその状態で保存し続ける、さらにはデータを一時的に分析する、可視化する。ここまでだと従来のビジネスインテリジェンスの流れです。さらにそれをAPIとして使って、アプリケーションにフィードバックを渡すことまで考えないと、単にデータの蓄積と可視化だけで終わってしまい、メリットを享受するところまでいきません。そう考えると、必要なパーツはすごくあります。

 これを包括的に提供するとなると、かなりの分厚い層が出来上がることになります。ソフトウェアだけではもう無理ですし、基盤のところも当然のように入ってきます。一部分はプログラマブルであることが求められ、連携する必要もある。でもいろいろな機能を使っているのに、そこで急にマネージドになって、自分たちで頑張ってくださいと言われると、少し萎えてしまいます。

 ある程度の自動化や、マネージドなサービスは必要になります。IoTにはかなりの総合力が求められ、クラウドならその要件を自社で満たすことなく実装できるという意味で、とても向いていると言えるわけです。

 先ほど話に出たクラウドの特徴である、何も買わなくていいので撤退しやすい、逆にすぐ始めることができる、小さく始めることができる点も大きいですね。そういうところがうまくかみ合うと、クラウドは生きると思います。

安田氏

日本IBMの安田智有氏
日本IBMの安田智有氏

 成功事例はたくさんありますが、やはりIoTとインターネットのやり取りで新しいことを実現するシステムにクラウドが適しているということは、ほとんどのお客様が理解しています。でも、それをオンプレミスにあるシステムに反映させる、もしくはオンプレミスにある機能を公開することで、新しいビジネスを作り出すというアプローチを取るお客様が非常に増えています。

 私たちのお客様は特にオンプレミスの巨大なシステムを、メインフレームだけにではなく、APIを活用してさまざまな分野で展開しています。その際に利用してもらっているのが「API Connect」というサービス群で、お客様が外に公開したい機能に対して認証やセキュリティ、課金、マネジメントなどを一手に担う形で提供しています。この導入事例はすごく多いですね。

 おととし、Citigroupと協業しました。金融のお客様は今、スタートアップ企業による脅威にさらされています。(FinTechなどを指し)このままではスタートアップ企業にユーザーを取られてしまうのではないかという脅威です。そこで、私たちはCitigroupと組んでハッカソンのイベントを実施しました。Citigroupが持っている基幹データや台帳データなどをAPIで公開し、それを活用するアプリを作るというものです。

 すると、Citigroupではこれまで想定していなかったようなさまざまなアプリがたくさん出てきました。そうしたアプリが数カ月で実用水準になるわけです。また、「既存の資産をクラウドとつなぐといろいろ楽しいことができそうだ」ということに、特に金融のお客様が気づき始めました。ブロックチェーンだけではなく、もともと持っているデータを、外のユーザーに使ってもらって価値に変換するというような事例が増えています。

林氏 最近では、企業が海外展開をするときに、現地にシステム担当者を置くとコストが大きくなるのでクラウド化するというケースは日本も増えていいます。また、M&Aでクラウドを活用するケースも多いですね。M&Aをクラウドに吸収していくときに、お客様のデジタルテクノロジの展開サポートを支援したりしています。

NTTコミュニケーションズの林雅之氏
NTTコミュニケーションズの林雅之氏

 そういったケースではラストワンマイルまで、ネットワークから運用保守も一元的に対応してほしいというニーズが多いです。特に、海外展開するお客様には充実したサポート体制が求められます。NTT Comはデータセンターの知名度が高いので、それも含めてフォローアップしています。

安田氏 海外の販売拠点といった研究開発(R&D)費の大きなオンプレミスの設備を持っているお客様はいいのですが、IT担当者がいないような規模ですと、現地のスタッフが勝手にファイルサーバを立ててしまったりなど、メンテナンスもできないということもあります。

 そういうときには、システムをクラウドに持っていって、ガバナンスを効かせつつセキュリティも守る。置きっ放しよりもクラウドに持っていった方が安全だという考えでクラウドを検討しているお客様は多い印象です。

竹爪氏 アジアでは多いですね。大手の製造業では必ずと言っていほどその地域に拠点を持っていますので。私たちのお客様でもエンタープライズの製造業のお客さまは、実態としてほとんどがグローバル企業なので、林さんがおっしゃったような相談も、本社と海外拠点のクラウド化がセットで来ます。

安田氏 進んでいるお客様では、オンプレミスシステムを仮想化技術で統合して、自社でクラウドサービス化しているのですが、その領域については、他社のリソースを使った方が柔軟性が高まり、選択肢が増えると考えるお客様は多いです。VMWareで仮想化統合しているお客様が本当に多く、比率も大きいので、それがクラウド分野でVMWareと協業するというさまざまな取り組みが発表される背景にあります。

吉田氏 マイクロソフトでは金融系の案件が非常に増えております。先ほど、危機感をお持ちだと申しましたが、まさに一例として三井住友銀行様との提携発表がありました。コグニティブのサービスを使って自動応答するためのシステムを取り入れているのですが、従来ではなかなか考えられなかった対面対応に新しい技術を導入していきます。

日本マイクロソフトの吉田雄哉氏
日本マイクロソフトの吉田雄哉氏

 対面対応では非常にセンシティブな情報が飛び交いますから、そこのセキュリティ対策も合わせて両社で取り組んでいきます。こうした提携はいままでに見られなかった、すごく大きな変化だと思います。ですからブロックチェーンの話もありましたが、金融基盤ではクラウドファーストにしていきたいという話が非常に増えていると思います。

 グローバルの話では、Azureの強みにデータセンターの数があります。データセンターのすべてではありませんが、インターネットを使わずに閉域網でつないでいますので、データを逃すという観点でも品質が担保できますし、法律的な問題にも対応しやすいと考えています。

 逆にデータ保護の観点で接続を切っているところもありますので、そうしたニーズにもきちんと答えられるデータセンターがあります。接続、非接続を選択肢として提供しているところは、私たちがグローバル対応でリードしている部分ではないかと思います。



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