爆発的に伸びるHCI市場、米VMwareにも訪れるビジネスチャンス



業界人の《ことば》から
第246回

2017年05月23日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

今回のことば

 「将来は、すべてがハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)になる。顧客はハードウェアではなく、ソリューションを求めている」(米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO)

日本がテクノロジーでリーダーシップを取る鍵はソフトウェアスキル

 米VMwareのパット・ゲルシンガーCEOが来日し、同社の事業戦略などについて触れた。

 VMwareでは「ネットワーク」「新たな収益源」「IoT」という3つの領域からビジネス拡大に取り組む姿勢をみせる。

 ネットワーク領域においては、VMware vCloud NFV1.0を提供。新たな収益源への取り組みとしては、VMware AirWatchマネージドモビリティーサービスを提供していることを強調した。

 さらに、IoTへの取り組みとして先頃、富士通と自動車業界向けIoTソリューションの提供で協業したことをあげた。また、5月上旬に開催されたDell EMC Worldでは、IoTのアーキテクチャの構築を支援するVMware Pulse IoT Centerを発表。とくに、IoT分野での成長に注力していると印象づけた。

 なかでも今回の来日においては、富士通の田中 達也社長との面談を明らかにし「富士通との提携では、車両内のすべてのデバイスに対して、自動車メーカーが必要なときに無線通信を用いたソフトウェアアップデート機能を迅速に提供できるようにする。クルマに対して統合したソリューションとして提供することができ、自然に機能を拡張することができる。だが、クルマは、より堅牢性が求められる。IoTを配備する上で、セキュリティーが弱ければ簡単にハッキングされてしまう。コネクテッドカーを成功させるためには、極めて重要な部分を我々が担うことになるのがVMware。富士通はカッコイイところを担当するが、インフラという退屈なところを担当するのが我々の役割である」などとジョークを交えて説明してみせた。

 また「日本は、IoTの広がりとともにテクノロジー分野におけるリーダーシップを取ることができるだろう。かつて日本の企業は技術でリードしていたが、それが米国のネット企業の成長によって低迷した。日本のテクノロジー企業にとってIoTの広がりはプラス要素であり、従来からの強みを生かすことができる」と指摘した。

 しかし「そのためには、ワールドクラスのソフトウェアのテクノロジーが必要である。日本の企業は、パートナーシップを含めて、ソフトウェアスキルを高めていく必要がある」と課題を提示した。

 その一方でゲルシンガーCEOは、デジタルトランスフォーメーション時代が到来している昨今の環境について言及。「これまで聞いたことがないような新しい企業が、モバイル、インターネット、クラウドを活用して、次世代のデジタル製品やサービスを生み出し、いままで業界を支えてきた企業を押しのけていくことになる」と指摘。「デジタルトランスフォーメーション時代の到来は、IT産業の拡大につながることになり、そのベースとなる新たなインフラ構築に向けて、VMwareは貢献ができると考えている。ソフトウェアによって、デジタルトランスフォーメーションを加速していくことになる」などと述べた。

急成長するHCI、市場に起こる変革

 また「新たな世界が到来することで、VMwareにも新たなビジネスチャンスが生まれる。これまではITを仮想化し、データセンターを仮想化し、クラウドの広がりに貢献してきた。だが今後は、これをネットワークにも展開し、NFV(Network Functions Virtualization)のような新たな技術を活用できる環境を提案していく」と語る。

 さらに「これは15年前に物理サーバーから仮想サーバーへの転換が始まったのと同じ状況が、ネットワークでも起こることを意味する。数多くのスマートデバイスが接続される世界において、テレコムキャリアやサービスプロバイダーが、今後ネットワークの仮想化に踏み出すことによって、効率をあげ、CAPEXを引き下げ、新たなサービスを生み出すことができるようになる」と明言した。

 また、昨今のハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)が急成長している動きをとらえて「これは大胆な発言に聞こえるかもしれないが」と前置きしながら「VMwareでは、すべてのハードウェアがHCIになると考えている。ハードウェア業界全体が2~3%ずつ縮小しているが、ハイパーコンバージドインフラは100%以上の急成長を遂げている。コンソリデーションやモダナイゼーションの波がハードウェア業界を襲っていることの証でもある」と指摘。「サーバーやストレージを単体で購入する人がいなくなり、ネットワークスイッチやルーターを単体で購入する人もいなくなる。多くの人がラックスケールの製品やアプライアンス製品を購入することになる。常にアップデートされ、適切に管理され、互換性も維持したソリューションとして購入したいという顧客が多いことの証でもある。顧客はハードウェアではなくソリューションを求めている。インフラの買い方や管理の仕方が変わり、市場に抜本的な変革が起こることになる。これは今後の重要なトレンドになる」と続ける。

 ゲルシンガーCEOが「すべてのインフラがHCIになる」と断言したのは、いまから3年前のEMC Worldでの基調講演。「それに向かって、HCIの市場が爆発的に伸びている。VMwareはこの市場でリーダーになる必要がある」と語る。

 もちろんVMwareにとって、HCIも大きなビジネスチャンスを生むことになる。

 vSAN Ready Nodeの150を超える認定プラットフォームでの展開のほか、今後は、vSphere、vSAN、NSXをひとつのスタックにネイティブに統合したVCF(VMware Cloud Foundation)の動きも見逃せない。

 なかでもデル テクノロジーズでは、VMwareに対応したハイパーコンバージドシステムとして、「VxRail」を投入。「この分野においてリーダーシップを担うことができる製品」(ゲルシンガーCEO)と位置づけられているものだ。デルも成長著しいHCIに力を注ぐ姿勢を示しており、VMwareとの関係強化を進めているところだ。

 今年夏には、第14世代サーバーを出荷。これをHCIの「岩盤」に位置づける。

 しかしデルによるEMCの買収によって、もともとEMCの傘下にあったVMwareは、いまはデルの傘下に変わった。

 ゲルシンガーCEOは「確かにデルとの関係性は向上し、VxRailやVxRackといったハイパーコンバージドシステムも協業効果によって戦略的な製品を投入することができている。また、VMwareはその関係を生かしながらデルのチャネルを活用していくこともできる。その点で、VMwareのビジネスを成長させることができる」としながらも、VMwareの基本姿勢はあくまでも「等距離外交」であることを強調する。

 「VMwareは独立した企業の立場を守っており、独立したエコシステムを維持することには変わりはない。HPや富士通、レノボとも仕事をし、それと同じ立場でデルがある」と語り、デル以外のベンダーとの協業によりアプライアンスソリューションを提供していく姿勢をみせる。

 だが、ゲルシンガーCEOが帰国後、米ラスベガスで開催されたDell EMC Worldでは、独立性の意味が変化していることを感じざるを得なかった。

Dell EMC World

 それは、Dell EMC Worldで数々のVMware関連製品が発表されたことでも裏付けられる。

 実際、Dell EMCのデビッド・ゴールデンプレジデントは「VMwareとデルは、家族としての関係。ほかのベンダーとは友人としての関係というレベル」と発言。結びつきに差があることを強調してみせた。

 HCIという新たな波が訪れるなかで、VMwareはこれまでとは違った競合と戦いながら独立性を維持することになる。HCIでの立ち位置をどう取るのかが今後のVMwareの成長を左右する要素のひとつになりそうだ。

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