国際無線通信規格Wi-SUN FANを搭載した小型IoT用ゲートウェイの開発に成功 – 科学技術振興機構



ポイント

  • カメラ、BLE搭載センサー等での収集情報を無線の多段中継によりビッグデータをクラウドまで伝送可能な小型IoT用ゲートウェイ(サイズ47×47×38mm)。
  • 国際無線通信規格Wi-SUN FANを搭載することにより、IoT用ゲートウェイ同士容易に多段中継(1段最大1km程度)し、通信エリアの面的カバー率を向上。
  • 無線LANと異なる周波数を用い、無線LANとの干渉もなく、堅牢性の高いIoTネットワーク構築が可能。


内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の原田 博司 プログラム・マネージャー(PM)の研究開発プログラムの一環として、京都大学 大学院情報学研究科 原田 博司 教授の研究グループ、ローム株式会社 鳥海 幸人の研究グループは、NextDrive株式会社(本社:台湾、台北市)、株式会社日新システムズ(本社:京都市)と共同で、国際無線通信規格Wi-SUN FAN注1)を搭載した”モノ”のインターネット(Internet of Things、以下IoTとする)用ゲートウェイの開発に成功しました。

今回開発したIoT用ゲートウェイは、NextDrive社が開発した世界最小クラスIoT用ゲートウェイに、京都大学、ローム、日新システムズが開発したWi-SUN FAN対応の無線通信モジュールを搭載したものです。従来のIoT用ゲートウェイは、Webカメラ、温湿度センサー等との組み合わせで、ホームセキュリティ、介護、環境計測等のために必要となる情報を収集し、携帯電話系、Wi-Fiによりクラウドに伝送することが可能でした。今回新たにWi-SUN FANに対応したことで、IoT用ゲートウェイ同士が多段中継伝送するマルチホップ機能により、収集したデータを別のIoT用ゲートウェイに多段中継する形での伝送が可能になり、通信エリアの面的カバー率が大幅に向上します。また、Wi-SUN FANはWi-Fiと異なる周波数を用いているため、Wi-Fiとの干渉もなく、堅牢性の高いIoTネットワーク構築が可能になります。これに加え、Bluetooth Low Energy(BLE)搭載のセンサーデバイスをWi-SUN FANに変換し、伝送することも可能です。

本成果は5月24日より東京ビッグサイトで開催される「Wireless JAPAN 2017」のWi-SUNアライアンスブース(日新システムズ展示エリア)および、5月30日より台湾、台北で開催される「COMPUTEX 2017」にてデモ展示を行う予定です。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)






プログラム・マネージャー 原田 博司
研究開発プログラム 「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」
研究開発課題 「超ビッグデータ創出ドライバ用システム統合技術の研究開発」                     

「超ビッグデータ創出ドライバ狭域系無線機の研究開発」
研究開発責任者 原田 博司(京都大学 大学院情報学研究科)
鳥海 幸人(ローム株式会社)
研究期間 平成28年度~平成30年度


本研究開発課題では、数km以内のエリアに存在する数万のメーター、センサーからデータ収集、機器制御を行う超ビッグデータを創出可能な低消費電力無線機の研究開発に取り組んでいます。

<原田 博司 プログラム・マネージャーのコメント>

PM


本研究プログラムでは、各個人の生体情報時系列計測データ、工場に設置された各種機器からの時系列計測データ等を用い、疾病、稼働リスクを予見・先取で発見することができる各種社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォームに関する研究開発を行っています。この実現のためには、家庭内、工場内に設置された各種センサー、メーター、モニターから創出されたビッグデータを有無線統合ネットワークにより効率的にインターネット/イントラネット上の処理エンジンに伝送する必要性があります。今回開発した小型IoT用ゲートウェイは、創出されたビッグデータを自身でネットワークに接続し、クラウドに蓄積させる機能だけではなく、収集したデータを別のIoT用ゲートウェイにWi-SUN FANよる多段中継で伝送することが可能であり、データ収集可能なエリアを拡張させ、より堅牢なビッグデータ創出用ネットワークを構築することができます。

<研究の背景と経緯>


昨今、家庭内にWebカメラやセンサー等を設置し、その計測結果をクラウド等に蓄積させ、ホームセキュリティ、遠隔医療、遠隔介護支援を行う家庭内IoTシステムの開発が盛んに行われています。NextDrive株式会社は、Webカメラ、温湿度センサー等との組み合わせで、ホームセキュリティ、介護、環境計測等のために必要となる情報を収集し、携帯電話系、Wi-Fiによりクラウドに伝送する小型IoT用ゲートウェイ「Cube J」注2)を開発し、商用化していました。しかし、IoT用ゲートウェイ同士は親機と子機の関係があれば通信はできましたが、子機から別の子機に多段中継伝送するマルチホップ機能が搭載されていませんでした。

一方で、京都大学、ローム株式会社、株式会社日新システムズは、IP通信によるマルチホップ機能を搭載し、長距離伝送性、耐干渉性に優れたWi-SUN FAN無線通信モジュールの研究開発を行ってきました。このWi-SUN FANは、IEEE 802.15.4g無線通信規格注3)による無線機器間での最大1km程度の伝送距離、10段以上のマルチホップ機能による多段中継機能を実現し、さらにセキュリティ等をWi-Fiと同等にすることにより、Wi-Fiと同等の使いやすさを実現できる機能がありました。しかし、IoT用の実システムへの応用はまだ十分行われていませんでした。

<今回の成果>


今回開発したIoT用ゲートウェイは、NextDrive株式会社が開発した小型IoT用ゲートウェイ「Cube J」(図1)に、京都大学、ローム株式会社、株式会社日新システムズが開発してきたローム製無線モジュールを用いたWi-SUN FAN無線通信モジュール(図1)を搭載したものです。サイズ47×47×38mmの筐体にWi-SUN FAN無線通信モジュールを搭載することで、自身が収集したデータを別のIoT用ゲートウェイにWi-SUN FANよる多段中継で伝送することが可能になり、宅内での面的なカバー率が向上します。この中継段数は10段以上も可能であり、大規模施設においてもこのIoT用ゲートウェイを利用できることになります。

また、Wi-SUN FANはWi-Fi(2.4GHz帯、5GHz帯)と異なる周波数(920MHz帯)を用いているため、Wi-Fiとの干渉もなく、堅牢性の高いIoT用ネットワーク構築が可能になります。また、長距離伝送特性を有するWi-SUN FAN搭載のセンサー、メーター、モニター機器との接続も期待できます。

今回は、Webカメラで取得した画像をUSB経由で、また、温湿度センサー(NextDrive製Thermo Pixi)で取得したデータをBluetooth Low Energy(BLE)経由でIoT用ゲートウェイに伝送し、IoT用ゲートウェイ間でWi-SUN FANを用いて多段中継伝送した後に、親となるIoT用ゲートウェイまで伝送して表示するデモンストレーションを行い、良好な伝送特性を得られることを実証しました(図2図3)。

<今後の展開>


今後、4者は今回開発したWi-SUN FAN搭載のIoT用ゲートウェイを商用化するために、Wi-SUNアライアンス注4)と共同で開発を行っていく予定です。本成果は5月24日より東京ビックサイトで 開催される「Wireless JAPAN 2017」のWi-SUNアライアンスブース(日新システムズ展示エリア)および、5月30日より台湾、台北で開催される「COMPUTEX 2017」にてデモ展示を行う予定です。



<参考図>

図1 開発したIoT用ゲートウェイ(左、サイズ47×47×38mm)
及び搭載したWi-SUN FANモジュール(右)

図2 想定した利用例

図3 実証試験の様子

<用語解説>

注1) Wi-SUN FAN (Field Area Network)

Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッド及び、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様。2016年5月16日にWi-SUNアライアンスにおいて技術仕様バージョン1が制定。物理層部にIEEE 802.15.4g、データリンク層にIEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6,ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用している。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様等も提供されている。京都大学、ローム株式会社、株式会社日新システムズは2016年11月にWi-SUN FAN搭載の無線機の開発に成功している。詳細はhttp://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/161116_1.htmlを参照。


注2) IoT用ゲートウェイ「Cube J」

NextDrive株式会社が開発した小型・軽量IoT用ゲートウェイ。本体をそのままコンセントに差し込むだけで設置することが可能な電気プラグ型の形状を取っており、IoT用ゲートウェイとして必要な、無線通信「Wi-Fi」「Bluetooth」「Wi-SUN」を搭載している。多様なアクセサリ(モーションセンサー、温湿度センサー、USBカメラ、赤外線リモコン及びスマートプラグなど)を用意しており。アクセサリは、本体に対し積み木のように重ねるだけで取得した情報を「Wi-Fi」「Bluetooth」「Wi-SUN」により伝送することができる。設定は全てスマートフォンで行うため、誰でも簡単に扱うことが可能。詳細はhttp://jp.NextDrive.io/cube/を参照。


注3) IEEE 802.15.4g

屋外で利用可能なセンサー、メーター等に搭載し、エネルギーマネージメント等を行うために必要となる無線通信伝送部(物理層)の国際標準規格。1ホップ最大1km程度の伝送が都市部でも実現でき、低消費電力にIPv6等の情報を伝送できる特長を有する。米国IEEE802.15委員会で制定。京都大学 原田 博司は、この標準化委員会の副議長であり、フレーム同期部コードが強制規格に採用される等技術的なメジャーコントリビュータである。


注4) Wi-SUNアライアンス

IEEE 802.15.4g規格をベースにエネルギーマネージメント、防災、工場等の各種アプリケーションを実現するために他のオープンな国際標準規格と融合させ、製造メーカー間で相互接続可能な国際無線通信規格「Wi-SUN Profile」を制定する任意団体。現在会員企業は全世界に100社以上。スマートメーターと宅内エネルギー管理システム(HEMS)との間の通信規格「Wi-SUN ECHONET」は全国の電力会社に採用。現在すでに当該仕様が搭載されているスマートメーターは1000万台以上出荷。今後は東京電力管内で2000万台以上出荷される予定。詳細はhttp://www.wi-sun.orgを参照。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>


原田 博司(ハラダ ヒロシ)

京都大学 情報学研究科 通信情報システム専攻

〒606-8501 京都府京都市左京区吉田本町

Tel:075-753-5317

E-mail:


鳥海 幸人(トリウミ ユキト)

ローム株式会社 センサ商品開発部

〒615-8585 京都市右京区西院溝崎町21

Tel:075-321-6273 Fax:075-311-1249

E-mail:

<ImPACT事業に関すること>


内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室

〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1

Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>


科学技術振興機構 革新的研究開発推進室

〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町

Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263

E-mail:

<報道担当>


京都大学 企画・情報部 広報課 国際広報室

〒606-8501 京都市左京区吉田本町36番地

Tel:075-753-5727 Fax:075-753-2094

E-mail:

ローム株式会社 メディア企画部 広報課
〒615-8585 京都市右京区西院溝崎町21

Tel:075-311-2121 Fax:075-311-1317

NextDrive 株式会社
〒106-0032 東京都港区六本木6-2-31 六本木ヒルズノースタワー17階

Tel: 03-5786-3257


株式会社日新システムズ 事業戦略部

〒600-8482 京都府京都市下京区堀川通綾小路下る綾堀川町293-1

Tel:075-344-7977

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科学技術振興機構 広報課

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