プロダクション環境やエンプラでのコンテナー運用に選ばれる「Rancher」、その事例



Rancherのコミュニティイベント「Rancher Night in Ebisu」レポート

2017年12月06日 13時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

 OSSのコンテナー管理ツール「Rancher」の国内ユーザーコミュニティRancherJPは12月4日、企業ユーザー事例を紹介するコミュニティイベント「Rancher Night in Ebisu」を開催。オルターブース、フューチャースタンダード、ぐるなび、インターネットイニシアティブ(IIJ)の4社が、Rancherの導入事例を紹介した。

コンテナーを手軽にGUIで運用する機能を提供

 Rancherは、コンテナーエンジンのDockerや、コンテナーオーケストレーターのKubernetes、Mesos、Docker Swarmなどを制御するコンテナーワークフローを構成するツール。米Rancher Labsが開発して2016年にOSS化した。CI/CD(継続的なインテグレーション/デリバリ)パイプラインの中で、コンテナーのテスト、デプロイ、管理の部分を担う。CI/CDのその他の部分(開発やビルド、パッケージング)はGitHub、Jenkins、Dockerなど他ツールを使う。

 Dockerをコマンドで管理するのが難しいというユーザー向けに、ホストにコンテナーイメージやオーケストレーターをワンクリックでインストールできるGUI「カタログ機能」、CPUやメモリーなどコンテナーの利用状況をGUI画面からチェックできる機能を提供しているのが特徴だ。また、Active Directory連携、監査ログ機能などコンテナーをエンタープライズ環境で利用するための機能を備え、商用サポートも提供する。

 Rancherのインフラは、Linuxのホストに構成されるストレージ、ネットワーク、ロードバランシングなどの管理サービスから成り、このインフラの上にオーケストレーター、ユーザーが利用するイメージカタログが載る。RancherインフラのLinuxホストは、オンプレミス、クラウドのどちらでの稼働にも対応しており、さらにマルチクラウド間を橋渡しするVPNベースのオーバーレイネットワーク機能によって複数のインフラ上で透過的に利用できる仕様になっている。

エンプラでマイクロサービスを使ってもらうためのRancher採用:オルターブース

 オルターブースは、同イベント当日にリリースした新ブランド「KOSMISCH」のサービス「KOSMISCH Cluster」でRancherを採用した。KOSMISCH Clusterは、マイクロサービス化されたアプリケーションをホストするためのプラットフォームで、オンプレミス/クラウドで稼働するフルマネージドのKubernetesクラスターを提供する。Kubernetesクラスターをマルチクラウド環境で一元的に管理運用するためのツールとして、Rancherを活用する。

 同社 代表取締役の小島淳氏は、KOSMISCH Clusterを提供する背景について、「パブリッククラウド各社から様々なサービスが出ており、ユーザーとしてはこれらのサービスを細かく分割(マイクロサービス化)して“いいとこ取り”で取り入れたい。各サービスを独立してオーケストレーションするためには、実行基盤にコンテナーが必要」と説明した。「KOSMISCH Clusterはコマンドで運用することも可能だが、エンタープライズでコンテナーを使ってもらうには、可視化、GUI操作、監査対応などが求められる。そこでRancherを使うオプションを用意した」(小島氏)。


オルターブースの小島淳氏

 さらに、同社が考えるマイクロサービスアーキテクチャの全体像は、「アプリケーションは分割してオンプレミスやクラウドなどインフラを問わずどこでも稼働できるようにする。一方で、データは分割せず(非機能要件を満たす)クラウドDBに格納する」かたちだと小島氏。このアーキテクチャを実現する技術は、「サービス分割(Single Page Application)」、「イベント駆動によるデータ連携(Serverless Pipeline)」、「データ形式を固定しない(Multi Model Data Store)」、「プロセス単位でのリソース管理(Container Cluster)」の4つであり、KOSMISCHブランドからこれらのサービスを順次リリースしていくとした。


マイクロサービスをより身近に感じてもらうためにオルターブースの文字を「親しみやすく」デザインしてみたという

AWS上のサーバーレス実装にRancherを活用:フューチャースタンダード


SCORERによる画像解析

 フューチャースタンダードは、画像解析プラットフォーム「SCORER」でRancherを導入している。SCORERは、Raspberry Piにつないだカメラと、パブリッククラウド各社が提供する画像解析サービスを組み合わせて、顔検知、歩行者のカウント、年齢性別推定、車両検知などの仕組みを企業が簡単に利用開始できる仕組みを提供するもの。道路の交通量調査、店舗での来客数カウント、屋外広告の注目率調査といったユースケースを想定する。


フューチャースタンダードの林幹久氏

 画像解析サービスは、Amazon Rekognition、Microsoft Cognitive Services、IBM Watson Visual Recognition、Google Cloud Platform Cloud Video Intelligenceなど、パブリッククラウド各社が提供しているが、「SCORERは各社のサービスのハブになるもの。それぞれのアカウントに登録するのは大変だが、SCORERに一度登録したら各クラウドサービスへの接続の面倒は当社がみて、ユーザーが好きなサービスを選択できるようにすることを目指している」(同社 林幹久氏)という。

 現在提供しているSCORERは、AWSを利用している。イメージセンサーやネットワークカメラ、スマートフォンからの映像ソースをエッジ(Raspberry Pi、スマホ、PC)からAWSへ送信し、クラウドの画像解析サービスやディープラーニングを用いた解析を行って、結果をユーザーアプリケーションに返し、解析ログをクラウドDBに格納するというのが一連の流れだ。ここで、AWS上での映像解析の部分でRancherを活用している。


SCORERでのRancher活用

 AWSに映像が送信されると、Rancherクラスターにある常駐コンテナ(Dispatcher)がStackを起動し、AWS S3から解析対象ファイルを取得・解析する。「AWSのサーバーレスの実装で、Rancherを大量データのバッチ処理に活用している」(林氏)。Rancherを選択した理由には、クラウドとオンプレミスをまたいだクラスターの生成が容易であること、主要な管理系ツールがカタログとして用意されていること、GUIで管理操作が簡単なことを挙げた。

Rancherで本番環境にBlue/Greenデプロイメントを実装:ぐるなび

 ぐるなびは、同社サービスの本番開発環境におけるBlue/Greenデプロイメントの実装に、Rancherを採用した。同社では、従来からサービスのデリバリースピードを向上する目的でDockerを活用しており、ここに、Rancherのロードバランサーで本番環境/テスト環境を切り替えるBlue/Greenデプロイメントの仕組みを取り入れた。


RancherによるBlue/Greenデプロイメントの実装

 同社 湯原孝明氏は、「プロダクションでのコンテナー利用には、コンテナ管理ツールは必須。OpenShift、Pivotal、Mesosphereなど様々検討した結果、Dockerの機能をネイティブサポートし、GitLabやJenkins、Grafana、Fluentdなど既存システムをそのまま使えるRancherを選択した」と説明した。


ぐるなびの湯原孝明氏

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 日本でのRancher展開は始まったばかりだが、RancherJPを中心としたコニュニティの活躍により、日本語情報も豊富に提供されている。恵比寿のレストランで開催された今回の「Rancher Night in Ebisu」には、会場内で身動きが難しいほど大勢の参加者が集まった。盛況すぎて、4社のうちIIJの事例が収録しきれなかったことをお詫びする。

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